e-Stat(政府統計の総合窓口)が提供するAPIを使い、消費者物価指数(CPI)と賃金データをリアルタイムで取得・可視化するWebダッシュボードを作成しました。毎月更新される公式統計データを自動で取り込み、物価と賃金の動向を多角的に確認できます。本記事ではデータの出典と内容、ダッシュボードの仕様と技術構成をまとめます。

■ データについて
データ出典: 政府統計の総合窓口「e-Stat」API
e-StatはAPI機能を無料で提供しており、アプリケーションIDを取得すれば誰でも統計データをプログラムから取得できます。今回使用した統計は以下の2種類です。
| 統計名 | 統計表ID | 提供機関 | 更新頻度 |
|---|---|---|---|
| 消費者物価指数(2020年基準) | 0003427113 | 総務省 | 毎月 |
| 毎月勤労統計調査 | 0003422948 | 厚生労働省 | 毎月 |
消費者物価指数(CPI)は、家庭が購入する財・サービスの価格変動を指数化したものです。2020年の水準を100として、各月の指数値と前年同月比を可視化しています。
毎月勤労統計は、事業所が支払う現金給与総額の推移を示す統計で、名目賃金と実質賃金(物価上昇分を除いた賃金)の動向を確認できます。
API URL例:https://api.e-stat.go.jp/rest/3.0/app/json/getStatsData?appId=YOUR_KEY&statsDataId=0003427113
■ 物価・賃金ダッシュボードについて
スーパーに行くたびに「また高くなった」と感じながら、実際のデータを手軽に確認できる場所がなかなかない。そんな動機から作り始めました。静岡市・浜松市を含む地域別CPIと全国平均の比較も盛り込み、静岡在住者として身近に感じられる視点を意識しています。
2025年以降、物価上昇が続く一方で賃金がそれに追いつけているかどうかは「実質賃金」で判断できます。名目賃金が上がっていても、物価上昇率を差し引いた実質賃金がマイナスであれば生活は苦しくなります。このダッシュボードではその関係を一目で確認できるようにしました。
■ ダッシュボードの概要
e-Stat APIをブラウザから直接呼び出し、取得したJSONデータをChart.jsでグラフ化するHTML単体ファイルです。サーバーサイドの処理は不要で、ファイルをブラウザで開いてAPIキーを入力するだけで動作します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| グラフライブラリ | Chart.js 4.4.1 |
| データ取得 | e-Stat API(JSON形式) |
| フォント | Noto Sans JP / Share Tech Mono |
| カラーテーマ | ダーク系(#0d1117) |
| ファイル形式 | HTML単体(サーバー不要) |
■ 主な機能
① KPIカード
画面上部に最新月の主要指標を5枚のカードで表示します。
- CPI総合:最新の消費者物価指数(2020年=100)と前年比
- 食料品CPI:食料カテゴリの指数と前年比
- エネルギーCPI:電気・ガス・ガソリンをまとめた指数
- 名目賃金:現金給与総額の前年比
- 実質賃金:物価調整後の賃金前年比
フィルター操作に連動して自動更新されます。
② 4タブ構成
概要タブでは物価・賃金の前年比トレンドを折れ線グラフで一覧表示します。CPI総合・食料品・エネルギー・名目賃金・実質賃金を同一グラフに並べることで、「物価と賃金のどちらが先に動いたか」が視覚的に把握できます。最新月の品目別前年比をドーナツグラフで示す「CPI内訳」も掲載しています。
物価詳細タブでは品目別の指数値推移(2020年=100)と前年比推移を並列表示します。コアCPI(生鮮食品除く)とヘッドラインCPIの比較グラフも収録しており、エネルギー・生鮮食品の影響を除いた基調的な物価動向を確認できます。テーブルでは全品目の指数・前月比・前年比・2年前比を一覧表示します。
賃金詳細タブでは産業別の賃金水準を横棒グラフで可視化します。製造業・情報通信・金融保険・医療福祉など主要産業の月額現金給与総額を比較でき、静岡の主要産業である製造業の賃金水準が全国でどのような位置にあるかを確認できます。
静岡比較タブでは静岡市・浜松市のCPIを全国平均・東京都区部と比較します。地方都市と大都市圏では物価上昇率に差があります。静岡市が全国平均より高い品目・低い品目を把握することで、地域の生活実感に近い分析が可能になります。
③ フィルター機能
表示期間(12・24・36・60ヶ月)・地域(全国/静岡市/浜松市)・基準(前年同月比/前月比/指数値)の3軸で絞り込みができます。フィルター変更のたびにグラフ・KPIカード・テーブルがすべて連動して更新されます。
④ e-Stat APIリアルタイム接続
APIキーを入力して「データ取得」ボタンを押すと、e-Statから最新データを取得してグラフを更新します。デモモードでは組み込みのサンプルデータで動作するため、APIキーなしでも機能確認が可能です。
■ データから見えること
2025年の消費者物価指数(全国・総合)の前年比は年間を通じて2〜3%台で推移しており、2020年基準の指数は110を超えています。5年間で10%以上価格が上昇した計算です。
品目別では電気代・ガス代のエネルギー系が前年比5〜8%と高水準で推移しました。食料品は外食・加工食品を中心に3〜5%の上昇が続いており、生活に直結する支出が大きく膨らんでいます。一方、家電などの耐久財は価格競争が続きマイナス圏で推移する品目も見られます。
名目賃金(現金給与総額)は2023年以降、前年比3%前後のプラスが続いています。ただし物価上昇率を差し引いた実質賃金は長らくマイナスか微プラスにとどまっており、「賃上げはされているが、物価上昇に追いついていない」という状況が数字として確認できます。
静岡市のCPIは全国平均に近い水準で推移しており、大都市圏(東京都区部)に比べると上昇率はやや低い傾向があります。一方でエネルギー価格の影響は静岡市でも同様に大きく、特に冬季の電気・ガス代の上昇が全体指数を押し上げています。
■ 技術的なポイント
e-Stat APIのメタ情報取得
e-Stat APIの品目(cat01)コードは統計表ごとに異なります。今回の実装ではまずgetMetaInfoエンドポイントでメタ情報を取得し、品目名からコードを自動特定する設計にしました。これにより統計表の改訂があってもコードを手動更新する必要がありません。
品目別の個別リクエスト
一度に全品目のデータを取得するとデータ量が膨大になるため(全国×品目×月で数万件規模)、cdCat01パラメータで品目を絞り込んで品目ごとに個別リクエストを送る設計にしています。Promise.allで並列取得することで待ち時間を最小化しています。
月次データのフィルタリング
e-StatのCPIデータには月次・年次・年度の値が混在しています。@timeフィールドの月部分(4〜6桁目)が01〜12の範囲にあるデータのみを抽出することで、月次データだけを正しく処理しています。
カラーテーマ
全体の配色はGitHub風のダークテーマ(背景#0d1117)を採用し、物価上昇を示す指標には赤系(#f78166)、賃金系には緑系(#3fb950)、CPI総合には青系(#58a6ff)を割り当てています。数値表示にはShare Tech Monoフォントを使用し、経済データらしい「端末モニター感」を出しています。
■ まとめ
e-Stat APIを活用することで、毎月更新される消費者物価指数・賃金データをHTML単体ファイルで可視化するダッシュボードを作成しました。APIキーを入力するだけで最新データを取得でき、静岡市・浜松市の地域比較も組み込んでいます。
物価と賃金の関係は家計に直結するテーマです。ダッシュボードを通じて「実質賃金がプラスかマイナスか」「どの品目が家計を圧迫しているか」を数字で把握できるようにしました。オープンデータを活用したWebダッシュボード制作の参考になれば幸いです。
参考リンク
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