はじめに──「丸い地球なのに“平面”って、何だ?」
私たちはスマートフォンの地図アプリや紙の地図を日常的に使っています。画面の上で「35.1815 N, 136.9066 E」というような緯度・経度(Latitude/Longitude)を目にしたことがあるかもしれません。一方で、測量図面や土地登記図、建設現場では「平面直角座標(X = 500000 m、Y = 4300000 m)」という数字が並んでいることがあります。なぜ、同じ“場所”を示すために、こんなに異なる表現方法があるのでしょうか。
ここで少し補足しておきたいのが、GIS(地理情報システム)の仕組みです。
地図アプリや分析ソフトなどのGISでは、表面上は緯度・経度で位置を扱っているように見えても、内部では自動的に平面直角座標系に変換して処理を行っています。
そのため、GIS上では「この地点から半径500 m」や「この範囲の面積を求める」といった距離・面積の計測が正確にできるのです。
つまり、私たちが地図上で線を引いたり範囲を囲んだりできるのは、背後でこの“座標変換”が行われているからにほかなりません。
この違いを理解しておくことは、地図の読み方や位置情報を正しく扱ううえで非常に重要です。今回は、まず“緯度経度”と“平面直角座標”という二つの座標系を「対比」し、「同等」な場面での違いや「因果」で起きる使い分けを明らかにします。
緯度経度 vs 平面直角座標──地球の丸さと“平らな地図”
まず、緯度経度。これは地球上で位置を示す古典的な方法で、地球の回転軸を基準にした「緯度(北緯/南緯)」と、「経度(東経/西経)」で表されます。例えば、名古屋市の中心あたりが「北緯35度10分・東経136度55分」といった形です。地球全体を見渡すためには非常に便利です。しかし、ここに落とし穴があります。緯度経度は角度で位置を示すため、同じ「1度」の変化でも、緯度や経度の場所・緯度帯によって実際の距離が変わってしまいます。つまり「角度で位置を示す=距離・面積の計算にはそのまま使えない」という点が問題となるのです。
そこで登場するのが、平面直角座標系(日本では主に 国土地理院 が定める方式)です。これは地球という曲面を「平面」に投影して、X軸・Y軸(東‐西/北‐南)で位置をメートル単位で示すというものです。例えば「X=300000 m、Y=4300000 m」というように、どこからどこまで何メートルといった距離感が直感的に掴めます。なぜこの方式が生まれたかというと、球面である地球上の位置をそのまま平面に落とせば「ゆがみ(歪み)」が出るため、地域ごとに誤差を抑えるために日本では19のゾーン(系)に分割して使われています。 国土交通省+2esrij.com+2
したがって、緯度経度と平面直角座標は、本質的には「対比」される関係にあると言えます。丸い地球を角度で示すか、平らな平面に投影して示すか、という選択肢です。そしてこの選択の「因果」として、扱う範囲の広さや使う目的(位置だけ示すか、距離や面積を計算するか)によって、どちらを使うかが決まってきます。
どのような時に「緯度経度」を使い、どのような時に「平面直角座標」を使うか?
それぞれの方式には得意・不得意があります。以下、用途別に整理します。
緯度経度が使われる場面
・世界地図、国際的な位置情報:緯度経度は地球全体をまたがる位置を示すのに適しています。
・一般的なナビゲーション、スマートフォンの位置表示:GPSによる緯度経度取得が標準です。
・広域スケール(例:県をまたぐ、国をまたぐ)での位置共有:角度で示すため、場所の認識がしやすい。
平面直角座標が使われる場面
・土地測量、建設、登記など、精密な距離・面積計算が必要な用途。
・地域スケール(市町村、数キロメートル範囲)での位置分析:平面上でメートル単位で扱えるため計算が簡単。
・GIS(地理情報システム)での空間分析:例えば「あるポイントから500 m圏内」のような計算をメートル単位で実施するなら平面直角座標が適しています。 esrij.com+1
「因果」で言えば、もし“距離・面積を計算したい”という目的があるなら、平面直角座標系を用いるべき、ということになります。一方、単に“どこにあるか”を示したいだけなら緯度経度で十分という使い分けが可能です。
距離は?緯度経度で面積を?──ステップを整理
では、実際に「距離を出したい」「面積を出したい」というときには、どちらの座標系を使えば良いのでしょうか?また、緯度経度で面積を出すことはできるのでしょうか?順を追って整理します。
距離を出したいとき
もし「この位置からあの位置まで何メートルか知りたい」という場合、緯度・経度で2点を示していると、そこから直接「何メートル」という数字を出すのはやや面倒です。緯度や経度1度の変化が場所により実際の距離が異なるためです。
そのため、緯度経度を平面直角座標に変換し、X,Y値の差からピタゴラスの定理などで距離を算出するとシンプルです。実務的には、先に示した 国土地理院 の「平面直角座標への換算」ツールなどを使うことが一般的です。 vldb.gsi.go.jp+1
面積を出したいとき
特に重要なのが「緯度経度で面積を図ると単位は?」という疑問です。結論から言えば、緯度・経度(角度)をそのまま「角度×角度」の形で囲んだだけでは、「何m²」という単位にはできません。なぜなら、角度をそのまま掛けても距離変換されておらず、実際の地表面での面積ではないからです。
つまり、「緯度経度で囲んだ四角形だから〇度×〇度=面積」という考え方は誤りです。このため、面積を求めたいなら、まず「平面直角座標系(m単位)」に変換して図形を作り、そのXY座標の値から面積(m²)を求めるという流れになります。実際、平面直角座標系ではX, Yともにメートルで表されますので、例えば「(X2–X1)×(Y2–Y1)」というように、ある範囲を四角形と仮定して概算面積を出したり、ポリゴンの数値計算にかけたりできます。 国土交通省+1
どうやって変換するか?
緯度経度→平面直角座標変換には数式があり、例えば

というような式が使用されます。 vldb.gsi.go.jp+1
ただし、現実にはこの数式を自分で書くことは少なく、Web上の変換ツールやGISソフトで「緯度経度を入力→平面直角座標を出力」という形式で利用されることが多いです。 gsi.go.jp+1
また、重要なポイントとして「系番号(1系~19系)」という概念があります。これは、平面直角座標系が日本全国を19ゾーン(系)に分けて定義されており、利用エリアごとに異なる原点や縮尺を持っているということです。 gsi.go.jp+1
「どの系を使うか?」は、エリアで決まる
「同等」の話として、もしあなたが愛知県名古屋市で作業しているとします。愛知県は「第7系(系番号7)」に属しています。 sinfonica.or.jp+1
この場合、平面直角座標を用する際は系番号7の定義を利用することが“正しい”選択です。なぜかと言うと、各系は誤差をできるだけ小さくするために、原点や縮尺係数(例えば縮尺値0.9999)などが最適化されているからです。 gsi.go.jp+1
もし誤って遠くの系(例えば系番号1)を使ってしまうと、距離や面積を出したときに誤差が大きくなってしまいます。つまり「範囲が狭い→平面に近似しても誤差小」「範囲が広い→緯度経度そのままでは誤差増」という“因果”関係が成り立ちます。そこで、「どの場面で、どちら(緯度経度 or 平面直角)を使うべきか」という判断がクリアになります。
実務での使い分けと注意点
それでは、実際の業務や日常利用で押さえておきたいポイントを整理します。
・位置だけ確認したいとき
スマホで「このお店、どこ?」と地図を見るとき、緯度経度でピンを刺して「あ、ここね」となるのは自然です。距離や面積を細かく求めたいわけではないので、緯度経度で十分です。
・距離・面積を求めたいとき
例えば、工事現場で「この敷地は何㎡か?」と計算するとき、市街地の数百メートル規模なら、平面直角座標に変換して「X差 × Y差」やポリゴン計算を用いるのが合理的です。また、災害対応で「この範囲を半径500 m圏で除染」といった計画を立てるなら、同様に平面直角座標系に変換したほうが誤差が少ないです。
・データを扱う際の注意点
- 測地系(データ基準):日本には過去に「日本測地系(Tokyo基準)」「世界測地系JGD2011」といった基準があります。緯度経度や平面直角座標を変換・扱う際には、どの測地系を用いているか確認が必要です。例えば、同じ緯度経度でも測地系が異なれば位置が数十〜数百メートルずれることもあります。 note(ノート)+1
- 座標系の統一:GISなどで複数のデータを重ねるとき、片方が緯度経度・もう片方が平面直角座標というまま解析すると、距離・面積計算が正しく機能しません。必ず「どちらか一つの座標系に統一してから分析」することが“同等”な比較をするコツです。 note(ノート)
- 縮尺・誤差の意識:平面直角座標系では原点から遠ざかるほど歪み(誤差)が若干大きくなるため、各系が適用範囲を限定しているという背景があります。例えば「第9系(系番号9)」は関東圏、東京都・茨城県・埼玉県などで用いられます。 国土交通省+1
具体的な数値例──「同じ地点を緯度経度で」「平面直角で」
ここで、「同じ地点を緯度経度で示した場合」と「平面直角座標で示した場合」、どのように表示が異なるかを簡単に触れておきましょう。例えば、名古屋市中心部(おおよそ北緯35.1815°, 東経136.9066°)という点があったとします。緯度経度で「35.1815 N, 136.9066 E」と示すと、位置だけは把握できますが、「ここから〇メートル移動したら?」といった距離感は直感的ではありません。一方、平面直角座標に変換すると「X=…m、Y=…m」という数字になり、“東へ+〇m、北へ+〇m”というように移動・距離の視覚化がしやすくなります。もちろん、この変換には前述の式・測地系・系番号といった条件が必要です。
そして面積を出したいとき、「この範囲は何平方メートルか?」という問いに対して、緯度経度をそのまま角度で囲んだだけでは答えになりません。例えば「北緯35度から35度1分・東経136度55分から136度56分」という角度範囲を想定しても、該当する地表での“何m²”かは一律には換算できないからです。そのため「平面直角座標に変換してからm²単位で面積を出す」ということになります。ここに「因果」の流れがあります:目的が“距離・面積を出したい”→平面直角座標の使用へ。
まとめ──「使い分ける知識」が、誤解を防ぎ災害時に生きる
以上を整理すると、次のような結論になります。
- 丸い地球をそのまま角度で示す「緯度経度」と、地球を平面に投影してメートル単位で示す「平面直角座標」は、用途別に使い分けるべきものです。
- 位置だけを示したいなら緯度経度、距離・面積を扱いたいなら平面直角座標という“同等”比較ができます。
- その“因果”として、使用目的・扱う範囲・変換条件(系番号・測地系)により、どちらを選ぶかが決まります。
- 特に実務(測量・建設・災害対応・GIS)では、「角度のまま距離・面積を計算しようとする誤り」を防ぐため、平面直角座標への変換が重要です。
- また、データを扱う際には“座標系の統一”“測地系の確認”“適用ゾーン(系番号)の確認”という基本を外さないことが、誤解やミスを防ぐ鍵となります。
読者の皆さまには、次のような行動をおすすめします:
- 自分が使っている地図やデータが「緯度経度」なのか「平面直角座標」なのかを確認する。
- 距離・面積を計算する場面では、角度ベースではなくメートル単位で扱える平面直角座標に切り替えられるかをチェックする。
- データを複数扱うときは、必ず座標系が統一されているか、測地系が揃っているかを確認する。
- 災害時やインフラ管理の際、「この地点から500 m圏内」という範囲指定が必要な場合には、平面直角座標での計算に慣れておくと迅速な対応が可能です。
最後に、この知識は「ただ難しい専門用語を覚える」というためではありません。正しい位置や範囲、距離・面積を使って判断できるようになることで、地図・データ・インフラに関わる多くの場面で“誤解しない・誤って使わない”という安心を得ることができます。地図の世界において、「どの座標系を使うか」が、結果を左右するひとつの重要な鍵なのです。
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