Geospatial PDFなにがいいのか?
近年、地理情報を扱う分野では、WebGISやクラウド型地図サービスの普及が進み、専門ソフトを使用せずに地図を共有する環境が整ってきました。その中でも、行政や測量、インフラ管理の分野で長く活用され続けている技術の一つが「Geospatial PDF(ジオスペーシャルPDF)」です。
本記事では、Geospatial PDFとは何か、その目的、利用可能なソフトウェア、そして国土地理院による整備の取り組みについて、GISに馴染みのない方にも理解できるよう整理して解説します。

Geospatial PDFとは何か
Geospatial PDFとは、位置情報を持ったPDFファイルのことを指します。一般的なPDFは、文書や図面を閲覧・印刷するためのフォーマットですが、Geospatial PDFはそこに地理情報が付加されています。
通常のPDFとの大きな違いは、単に地図画像が表示されるだけでなく、座標情報を内部に保持している点です。これにより、PDFを開いた状態でカーソル位置の緯度・経度を確認したり、距離や面積を測定したりすることが可能になります。
つまり、Geospatial PDFは「地図を画像として保存する技術」ではなく、「地図の位置情報を維持したまま共有する技術」と言えます。
Geospatial PDFが利用される目的
Geospatial PDFは主に、専門GISソフトを持たない利用者に対して、地理情報を正確に共有することを目的として利用されます。
行政資料としての活用
行政機関では、都市計画図、ハザードマップ、管理区域図など、多くの地図資料を扱います。これらの資料は正確な位置情報を伴う必要がありますが、閲覧する側が必ずしもGISソフトを保有しているとは限りません。
Geospatial PDFを使用することで、一般的なPDF閲覧ソフトで資料を確認しながら、位置情報や距離を把握できるため、行政資料として非常に扱いやすくなります。
測量成果の納品
測量業務では、成果物として図面を納品する必要があります。紙図面だけでは位置情報の確認が困難ですが、Geospatial PDFを利用することで、納品後でも正確な位置を確認することが可能になります。
測量分野では、縮尺の正確性が重要視されるため、Geospatial PDFの「縮尺を維持した状態で共有できる」という特性は大きな価値を持っています。
現場作業での利用
山林や災害現場など、通信環境が不安定な場所では、Web地図が利用できない場合があります。このような状況でも、Geospatial PDFはオフラインで利用できるため、現場での位置確認や作業計画に活用されています。
特に森林管理や災害対応の分野では、タブレット端末にGeospatial PDFを保存して現地で参照するケースが多く見られます。
契約・証跡資料としての役割
Geospatial PDFは、計画範囲や施工区域などを「証跡」として残す用途にも利用されます。PDFは編集が容易ではないため、提出資料として信頼性が高く、契約書や報告書の添付図面として採用されることが多いフォーマットです。
対応しているソフトウェア
Geospatial PDFは、作成するソフトと閲覧するソフトの両方が存在します。
作成ソフト
代表的な作成ソフトには以下があります。
- QGIS
- ArcGIS Pro
- Global Mapper
- GDALツール群
これらのソフトでは、GISデータをレイアウト形式で整理し、地理情報を保持したPDFとして出力できます。特にQGISは無償で利用できるため、Geospatial PDF作成環境として広く利用されています。
閲覧ソフト
Geospatial PDFの利点の一つは、閲覧環境のハードルが低い点です。
主に以下のソフトで閲覧できます。
- Adobe Acrobat Reader
これらのソフトでは、PDF上でカーソル位置の座標表示や距離測定などの機能を利用できます。GIS専用ソフトを必要としないため、行政職員や現場担当者でも扱いやすいという特徴があります。
国土地理院におけるPDF整備の取り組み
日本では、国土地理院が地理情報の公開を積極的に進めています。その中で、地図データをPDF形式で提供する取り組みも行われています。
国土地理院が提供する電子地形図や災害関連図面では、Geospatial PDF形式が採用されており、利用者はPDFとして閲覧しながら位置情報を確認できます。
この取り組みの背景には、「専門ソフトを持たない利用者にも地図を提供する」という目的があります。GISソフトは高度な機能を持つ一方で、導入や操作のハードルが存在します。Geospatial PDFは、そのギャップを埋める役割を担っています。
また、国土地理院のPDFは、印刷用途にも対応しており、紙地図としての利用とデジタル閲覧の双方を考慮した設計となっています。
Geospatial PDFの特徴と位置づけ
Geospatial PDFの特徴を整理すると、以下の点が挙げられます。
一方で、GISソフトのように属性検索や空間解析を行う用途には向いていません。そのため、Geospatial PDFは「解析用データ」ではなく、「成果物として共有する地図」として利用されるケースが一般的です。
現代GISとの関係
現在の地理情報活用は、大きく二つの方向に分かれています。
一つはWebGISを中心とした「動的な地図共有」です。これはリアルタイム更新や検索機能を持ち、多くの利用者に情報を届けることができます。
もう一つがGeospatial PDFに代表される「静的な成果物共有」です。こちらは、位置情報を保持した状態で資料として保存し、提出や証跡として活用されます。
この二つは対立する技術ではなく、目的に応じて使い分けられる補完関係にあります。
まとめ
Geospatial PDFは、地図情報を「誰でも扱える形式」で共有するために生まれた技術です。専門的なGIS環境がなくても、正確な位置情報を確認できる点は、行政や測量、現場作業において大きな価値を持っています。
近年はWebGISの普及により、地図共有の方法は多様化していますが、成果物として地図を保存・提出する文化は依然として重要です。Geospatial PDFは、そうした地図文化を支える実用的なフォーマットとして、現在も広く活用されています。
地理情報を扱う上で、Geospatial PDFは「地図を保存する技術」として理解すると、その役割が分かりやすいでしょう。
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